マーケティングに携わると、様々な理論や手法に触れる事がありますが、WEBマーケティングの施策を講じる際にも役立つ理論の一つとして「プロスペクト理論」と呼ばれるものがあります。
プロスペクト理論は、心理学者であり行動経済学者のダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)氏と、心理学者のエイモス・トヴェルスキー(Amos Tversky)氏の2人によって1979年に考案された顧客心理モデルです。
ここでは、プロスペクト理論とは何?をわかりやすく解説するだけでなく、プロスペクト理論を克服し、ご自身の人生に上手く活用するだけで、人生が加速度的に上手くいく事になる可能性について触れていきたいと思います。
プロスペクト理論とは?
最初に、プロスペクト理論とは何??というところですが、小学生の子どもにも理解してもらえるようにわかりやすく解説すると、
「君は、少しでも得する方が好き?」「君は、できるだけ損したくない?」
どちらかを選んでと言われたら、どっちを選ぶ??
と聞いた場合に、多くの方が「得する事よりも、損をしたくないという心理が働く」というのが、研究結果で分かったというのが、プロスペクト理論になります。
しかも、通常の状態を「1」とした場合に、損したくないという気持ちは2倍~2.5倍ほどになるそうで、人は得するよりも損したくない気持ちが心理面で働くという事が分かれば、ビジネスのあらゆる場面だったり、恋愛や子育てにも応用する事が出来るのでは無いでしょうか。
一方で、FXや株といった投資に関しては、プロスペクト理論を克服し、自分の心理状態をコントロールできなければ、大きくマイナスに作用する可能性があります。
投資の世界で「損切り」と呼ばれる言葉がありますが、含み損が出ている投資案件の損失を確定する事で、これ以上の損失を出さないようにするものですが、例えばプロスペクト理論が働き「損切りせず持っていれば、いずれ上がるはず・・」と考えると、損切りすれば最少額の損失で済んだところが、塩漬けしなければいけない状態になってしまう事もあります。
私も、プロスペクト理論が働き、ロスカットができず含み損がビックリするくらいに膨らんだ結果・・塩漬けしてしまったという苦い経験があります・・
このように、評価損益率がー27.71%まで膨らんだ事があります・・涙
私のケースでは、本来ロスカットをー5.00%で入れるように考えていたのですが、あれよあれよと損失が膨らむ中、自分でシナリオを作っていき、5倍の含み損を抱えるまで膨らんでしまいました。
プロスペクト理論で「損したくない(損切りしたくない」という心理が働いた反省すべき例ですが、逆を言えば、自分自身の心理面を克服し、コントロール出来るようになれば、投資で結果が変わっていくと思いますので、それだけでこれまでの人生と180度違うものになっていくのでは無いかと思います。
プロスペクト理論の具体例
プロスペクト理論が、得することよりも損する事を選択する顧客心理という事を理解した上で、もう少し深堀りするために、プロスペクト理論を使った具体例をいくつか紹介してみましょう。
まず、1つ目の例ですが、
- ゲームに参加し勝てば100万円もらえるが、負けるとゼロ。
- ゲームに参加しなくても10万円もらえる。
という例がある場合、人は何ももらえないというリスクを負いたくないので、ゲームに参加するだけで10万円もらえる2の例を選ぶことが圧倒的に多いです。
プロスペクト理論におけるリスク回避
先程の例をもう一度参考にしたいのですが「期待値」と呼ばれる、ある行為に対して得られる対価を数値化したもので比べた場合、
- 1のケースは50%の確率で勝利出来るので、期待値は50万円
- 2のケースは100%の確率で10万円もらえるので、期待値は10万円
となり、1のケースの方が圧倒的に得するわけですが、プロスペクト理論が働き、人はゼロになるリスクを回避し、確実に10万円をもらおうとします。
つまり、期待値の高い、低いで行動するのではなく「利益がないというリスクを回避する」を前提に、人は行動するという事です。
2つ目の例ですが、
- 確実に5万円を支払う。
- ゲームに勝てばゼロで済むが、負けた場合は20万円を支払う。
という場合ですが、人は少しでも損をしたくないという心理が働き、ゲームに勝てばゼロで済む2のケースを選ぶ事が圧倒的に多いです。
プロスペクト理論における損失回避
今回の事例も期待値を比べた場合
- 1の例は100%の確率で5万円を支払うので、期待値は5万円
- 2の例は50%の確率で20万円を支払うので、期待値は10万円
となり、2の例の方が損失が大きくなる可能性があるのに、人は損失が少しでも大きくなるのを回避しようと行動するため、損失がゼロになるのであればという事で「損失回避」の動きをします。
期待値を比べ、利益や損失を考える事ができれば良いのですが、
- 利益を得られる場合は、リスク回避行動
- 損失を被る場合は、損失回避行動
と、一見よく似たケースであっても心理状態はまるで逆になるというのが、プロスペクト理論の本質という事になります。
投資におけるプロスペクト理論の働き
プロスペクト理論が、利益がある事についてはすぐに確定させたいのに対し、損失を被る場合は損失を回避したいと行動するわけですが、FXや株といった投資に置換した場合、
(=思ったよりも早く利確し、利益が最小限になる事も多い。)含み損が出ているケースでは、損切りで損失を確定したくないという心理状態
(=シナリオ通り損切りできず、損失がどんどん膨らみ、想定外の損失が出る事も多い。)
が、働きやすいのでメンタリティが作られていなければ、大損する可能性のほうが高いという事です。
投資でプロスペクト理論を克服するために
このプロスペクト理論を知った上で、投資に活かすためにはどうすれば良いか?ですが、
期待値など数字化して、ルールを決める事。
が一番の克服方法です。
プロスペクト理論は、無意識のうちに心理内で起きているもので、無意識領域における損得勘定と言っても良いわけなので、見えないものを視える化するだけで、大きく成果が変わる可能性があります。
自分自身のシナリオを決め、
「利益確定は●●円になったから確定する」
「シナリオが崩れ、方向性が変わったので、即座に利確もしくは損切りを行う」
といった数字化やルールを明確にする事で、リスク回避や損失回避のプロスペクト理論に左右される事は少なくなるはずです。
プロスペクト理論を克服しないと不幸な事に
プロスペクト理論を投資に活かす事は、投資で大きな損失を出さないために、実は重要なポイントになる理由は人間の心理は一度大きな損失を出すと「損失を取り戻そうと、以前よりも取引を大きくする」傾向があります。
投資の損失といえば、元金が減っていく事を表しますが、ロスカットが間に合わなかった事で追証などが必要となったり、借金をするケースもありますので、思った以上に損失が大きくなってしまい、取り返しのつかない事になる事もあります。
自分の感情のまま投資を続ける事で、自分だけでなく家族や関わっている人たちにも迷惑をかけてしまう事もありますので、そのような事のないように、プロスペクト理論を知った今だからこそ、投資ルールをしっかり決めて、自分のルールに基づき常に改善していくようにしましょう。
また、ギャンブルやパチンコの場合も同じです、プロスペクト理論が働きやすいので、自分の中でルールやお小遣いの範囲で行うなど、無理のない資金計画を立てるようにしましょう。
恋愛におけるプロスペクト理論について
投資だけでなく、プロスペクト理論は「恋愛心理」にも働きやすいと言われていて、いくつか例を挙げると、
- なかなか告白できない
- マンネリ化
- 不倫や浮気を続ける
- 失恋をいつまでも引きずる
といったものですが、すべてプロスペクト理論で心理状態の説明がつきます。
なかなか告白できないのは損失回避と関係が
1つ目の「なかなか告白できない」ですが、ここまで見てきたプロスペクト理論でいうところの「損失回避」と大きく関係しています。
告白すれば付き合えるかもしれない・・だけど断られると思うと告白できない・・・
という心理状態がまさに損失回避の状態で、断られる事で落ち込むくらいなら告白もしないでおこうという心理状態です。
このような状況の場合は、「ショックアブソーバー」を発動させ、ある程度のショックを想定しておき、もしそのようなショックが起きた場合でも少しでも落ち込まないようにしておく事で落ち込みを回避しようという方法がありますので、告白する前に断られる可能性があったり、「あの子ならこんな事言う可能性もあるな」という事を想定した上で、告白すると断られてもショックが和らぐ可能性はあります。
マンネリ化は感応度逓減性と関係が
2つ目の「マンネリ化」ですが、プロスペクト理論の1つで「感応度逓減性」と呼ばれる心理状態が働くことで招く事が分かっています。
感応度逓減性とは、「感情や感度は、大きくなればなるほど徐々に減っていく」という意味で、長くいればいるほど、感情はどんどん冷めていくという事が人間の性なのです。
つまり、人間の感情は長く続かず、感情に慣れていくという事なので、定期的に刺激を与え続けなければ、マンネリ化を克服する事は出来ません。
不倫や浮気を繰り返すのは損失回避や現状維持バイアスと関係が
3つ目の「不倫や浮気を繰り返す」ですが、プロスペクト理論では人は損失を回避したいという心理が働くという事は説明しましたが、同時に「現状維持を望む==現状維持バイアス)」が働く傾向があります。
つまり、不倫や浮気相手を失いたくないという感情が働きやすく、またいけない関係だと分かっていても現状をダラダラと続け別れられないという事があるのです。
また、プロスペクト理論に「曖昧回避性」や「不確実性回避」といったものがあり、人は曖昧や不確実な状態を嫌うので、とりあえず今の彼氏(彼女)をキープしたり、不倫や浮気相手と付き合い続けるのですが、これは「もし別れても次が見つからないかもしれない」という心理が働いているようなので、現状維持バイアスの変化球と言っても良いかもしれませんね。
失恋をいつまでも引きずるのは保有効果と関係が
4つ目の「失恋をいつまでも引きずる」ですが、プロスペクト理論の「保有効果」と呼ばれる心理効果があるためで、人は自分が持っているもの(持っていたもの)に対して、高い評価をする傾向があると言われています。
モノを捨てられない人の心理も保有効果が働いていると思われるのですが、過去の彼氏(彼女)をいつまでも引きずり忘れられないのは、保有効果で過剰に評価している事が心理面に働きかけているのです。
さらに保有効果がすごいところが、付き合ってもいないのに、自分の彼氏(彼女)であるかのように錯覚させる事があるという点で、分かりやすい例で言えばホストやホステスとの関係です。
ホストやホステスは、お客様に優しくしたり、気があるような行為をして気を引く事がありますが、自分のモノかのように勘違いしたお客様は自分の恋人になったかのように錯覚を起こす事がありますが、この心理面は保有効果の変化球的な効果だと言われています。
ビジネスにおけるプロスペクト理論について
ここまで見てきたとおり、プロスペクト理論は投資や恋愛だけでなく、ビジネスにも応用する事で、相手とのより良い関係を構築する事に使う事も可能です。
では、ビジネスに応用するためにはどうすれば良いのか?ですが、この点を考えるのにマーケティング理論の1つ「フレーミング効果」を活用するのがおすすめです。
フレーミング効果とは?
フレーミングとは、同じことを言っていても、言い方や見方を変えるだけで全く違った見解になるというもので、枠組みを変える事を指します。
具体的な例ですが、
「あと1時間しかない」
「まだ1時間ある」
だったり、
「成功率が95%もある手術」
「100人中5人が失敗する手術」
といったように、内容は一緒ですが、使うフレーズが変わるだけで、プラスの印象とマイナスの印象に変わります。
この枠組みを変えるだけで、印象を操作できる効果の事を「フレーミング効果」と呼ぶのですが、フレーミング効果がわかればビジネスや子育てでも応用が可能です。
ビジネスにおけるフレーミング効果
ビジネスの中でも特にマーケティングを考えた場合、フレーミング効果は絶大な力を発揮します。
一例を挙げると
- 期間限定キャンペーン
- 返金保証
- ●●人に1人だけ無料
- ポイントサービス
は、プロスペクト理論とフレーミング効果を上手く活用したマーケティングです。
期間限定や●●人に1人だけ無料といった「限定性」は、買わないと損するという利益確定の心理が働くため、限定感を高めるようなフレーミングでコピーライティングやPOPを作成すると効果が高くなります。
返金保証ですが不利益性をお客様だけにせずこちらでも取る事で、お客様に損をさせない、最悪なケースでも全額返金に応じてもらえるという心理が働きます。
ポイントサービスは今月中にポイント失効といった損失回避の心理を上手くつく事で、お客様の行動を促す事もできるので、メルマガなどで誘導したり、また楽天などが行うポイントサービス中に買い物をしなければ損をすると損失回避させる事で、大きな利益に繋がる事もあります。
プロスペクト理論についてのまとめ
プロスペクト理論を応用する事で、投資、ギャンブル、恋愛、ビジネスやプライベートまで幅広く人生を上手く活かせる事ができ、結果的に今の人生よりも100倍上手く立ち振る舞う事が出来るようにもなれます。
投資やギャンブルで言えば、
「なるべく少ない負けで利益を最大化する=損小利大」
恋愛で言えば、
「告白できない、マンネリ化防止や失恋の痛手から早く立ち直る」
ビジネスで言えば
「商品やサービスの魅力を最大限伝えるために、枠組みを変えて、限定性や損失回避に繋げる」
事で、より良い結果を得る事に繋がるのでは無いでしょうか。
今回、マーケティング理論の中からプロスペクト理論を紹介しましたが、今後もマーケティングに関する情報やWEBマーケティングに関する情報をまとめ、お届けできればと思いますので、是非とも応援クリックを頂けると幸いです。
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